宿題はAIに訊くな!

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理科の授業の終わり。講師がホワイトボードに本日の宿題を書いた。 そして、その下にさらに一言、こう付け加えた。

「AIなし!」と。

その文字を見たとき、「うん、彼もすっかりKuma塾の講師になったな」と、私は密かに嬉しくなった。

実は、彼との出会いは駅前のオープンスペースだった。 彼がストリートライブをしているところへ、ギター好きの私が通りかかったのだ。当然、足を止めて耳を傾け、思わず話しかけた。

「今度、一緒にギターの練習しようか?」

そんなノリで彼が教室へ遊びに来るようになり、雑談の中で、なんと彼も「中学受験塾で講師をしている」ことが判明。しかも、出身は大阪でトップの中高一貫校!これはもう、誘わない手はない!

Kuma塾とは、そんな塾なのだ。形式ばった固いことは抜きにして、「本当に子供のためを思って向き合ってくれる人」に手伝ってほしい。その思いだけで繋がっている。

そんな和やかな塾なのだが、こんな出来事もあった。

ある生徒と1対1で個別指導をしていた時のこと。

「じゃ、この類題解いてみよか」

「はい」

こういう時、私はわざと席を立つことにしている。そして少し離れたところから、様子を窺うのだ。

あれ?右手に鉛筆を持っていないぞ…。

「できた?」

「わかりません」

「どれどれ」

手元を見に行った私の目に止まったのは、白紙の解答欄ではなくて別のものだった。

彼には、市販のテキストをそのまま渡さず、購入したテキストをバラし、回ごとにスキャン・編集してプリントにし、さらに専用のバインダーに綴じさせている。(※正規購入分を彼個人のために加工しているので、違法コピーでも使い回しでもありません、念のため)。

彼にとって少しでも使いやすく、勉強しやすくなるようにという考えからである。

彼はそのプリントの隅っこを指でいじくり、10枚ほど破っていたのだ。

「これ、何?」

「あ、破れました」

「は?破れた?」

「はい」

「もし、君がいっさい手を触れずに紙が破れたとしたら、それ超能力やな!」

ここからは、トップギヤからオーバードライブに入れて叱り倒した。

もちろん、手出しはしない。が、コテンパンにやっつけたのである。

「受験以前の問題や」

「・・・」

「そういう心構えの子に、ものを教えるのは嫌だからもう帰って!」

「嫌です」

「こっちも嫌!」

私は彼に背中を向け、自分のデスクに座った。

しばらくの沈黙の後。

「解けました。」と。

私はそれには返事をせず、一言だけこう言った。

「破ったページ、セロテープで直しなさい」

破れたページをテープで修正し、いつものような詰まらないイタズラはせずに、彼は肩を落として帰って行った。

もちろん、いつも通り下まで一緒に下り、見送った。

『なぁ、少年。 大事なのはな、人の気持ちを汲めるかどうかや。 それができんやつは、いくら勉強ができても価値がないんやで……。』

駅に向かう少年の背中に私は無言で言葉をかけた。

彼は今日のこと、何をどう捉え、いつまで覚えているだろうか。

自分に非がないと思い込んでいるうちは、人間はもう伸びないんだよ。


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